結婚指輪

金属アレルギーの救世主チタン

チタンのピアスが登場するまで、かつて、ファーストピアスのホールは化膿するのもあたりまえな通過点でした。今のように皮膚科でピアスを空けてくれるのも定着していませんでしたし、ファーストピアスは純金が使用されていました。

純金製ピアスがなぜ金属アレルギーの誤解を招いたかは皮膚科で処方されたピアスについてこちらに概述しました。

身体の部位でpH値が違う

わたしたちの皮膚は皮脂膜が護ってくれているおかげで細菌やカビに侵されません。皮脂膜のpHは弱酸性です。皮膚は酸に対して強く、アルカリに対して比較的弱い傾向があります。そのため、アルカリ性が皮膚に触れるとかぶれやすいです。言うまでもありませんが、皮膚を極端な酸性、アルカリ性に曝せば、金属アレルギーではなく、「一時的刺激性皮膚炎」を惹き起こします。
ファーストピアスのホールを消毒を頻繁にしすぎてかえってトラブルを惹き起こしたのは一時的刺激性皮膚炎です。
pHは男女でも異なりますし、新生児と老齢と年齢差でも違いがあります。ネックレスをする首まわりと指輪をつける指でもpHは異なります。指先にいくほど皮脂は減りますがpHは上がって酸性が強めになっています。夏と冬のpHも変わり夏は酸性に傾き、冬はアルカリに傾きます。お風呂でpHは激変します。熱いお風呂でアルカリに、ぬるいお風呂ほど酸に傾きます。これらの酸、アルカリはどこからくるのでしょう。それは分泌された汗の成分、乳酸と皮膚表面の脂肪酸です。

皮膚は個人差や年齢差があっても回復するはたらきがあります。そしてこのpH値内なら生きて行かれるという人間にとっての許容範囲があります。チタンが金属イオンとなって外へ溶出すると仮定するならば、人の肌のpHの許容範囲を大きく超えるpH値でなければ溶中に流れ出ることはありません。従ってチタンの結婚指輪は肌に感作しないことが明確です。レアメタルの結婚指輪

ジルコニウムとは?核エネルギー産業の発展からの恩恵を受けて広まってきた新素材

本来は錆びやすいジルコニウムという金属

金属アレルギーの救世主はチタンだけではありません。純金も純プラチナも金属アレルギーを起こさないのですが、残念ながら、純金のピアスや純プラチナという本当に混ぜ物をどこにも使わないで作られている完全な純貴金属ジュエリーというのは、ほとんど市販されていません。
ジルコニウムとハフニウムの結婚指輪 ジルコニウムという金属は、チタン同様、本来はとても錆びやすい金属です。
厳密に言えば錆びではなく腐食のことですが鉄錆びを連想するケースが多いのでさびという言い方をする場合もあります。実際にさびというのは材質面の劣化を指しますが、このジルコニウムやチタン、タンタルのさびは劣化と逆の貴な状態ですのでさびという表現は誤りになります。
しかしどうしてこの実は腐食しやすいジルコニウムが金属アレルギーの救世主になるかというと、表面に不動態を作るからです。乱暴に言えば、天然のメッキのようなもので、傷ついても天然のちからで瞬時に再生するメッキに例えてみたいと思います。
チタンとジルコニウムも大変良く似ていて、この不動態というのはジルコニウム金属分子と酸素分子が化学吸着層を構成し、緻密で安定した被膜に護られます。つまり、私たちが目で視ているチタンやジルコニウムは裸の金属の状態ではないということです。酸素が在る限り、この不動態で覆われたジルコニウムが目には視えています。そしてこの不動態は自然界では酸素さえあれば破られることがないので金属アレルギーが起こらないというしくみです。
人工的に強酸を与え物理的な負荷で不動態を傷つけても酸素さえあれば瞬時に酸素が吸着しますので、肌に感作することはありません。

酸素分子の吸着力というのはとても緻密で極めて安定しているため、酸素が邪魔して溶接もできません。溶接するにはアルゴンで酸欠にした状態を作って加工する必要があります。そうでもしない限りどんな高温でも溶けてくっついてくれない性質です。酸にも侵されず、高温にも耐えるため、ジルコニウムは原発の燃料棒の材質として有用な金属として利用されています。

原発のために分離したジルコニウムとハフニウム

最近になって発見されたジルコニウムとハフニウム
純ジルコニウムという金属は実際はなく、Zrに微量のハフニウムが混入します。精錬の技術上近年までは、ジルコニウム(主)とハフニウム(副)を分ける技術がありませんでした。精錬には非常に硬度な技術と電力を伴います。
ジルコニウムとハフニウムを分ける必要があったのは原発の原子炉に使いたかったからです。原発以外の用途に使用するなら、このような硬度な技術で精錬して分離する必要がありませんでした。しかし原子炉に用いるために厳密に純度の高いジルコニウムを開発する必要があったのです。


参照文献 ジルコニウム・ハフニウムの製造と用途 -現状と将来- 芝田隼次

ZrとHfの流通事情

自然界にハフニウム鉱石といったハフニウムだけが採れる鉱石は存在しません。ジルコン鉱床中から50:1でジルコニウム(主)と分離した不純物=副としてハフニウムが抽出されます。

すべて輸入に頼っていますがジルコニウムという金属の90%がウラン燃料の被覆管材、炉心に使われます。残り10%が化学装置その他で。ハフニウムは主に原子炉制御棒として使われます。こうした原発のために、ジルコニウムとハフニウムの分離技術が次々に研究され技術が進歩してきたという背景があり、経済産業省により流通が管理下にあるため、そうしたジルコニウムとハフニウムを指輪の材料にしようと思うと入手にはコスト高となる事情があります。


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